遺残症
 電気生理学的異常(電気軸,脚ブロック)
 半月弁,房室弁異常(逆流,狭窄)
 心室形態,機能異常(体心室右室)
 血管系:形態異常(奇静脈),欠損(下大静脈欠損),高血圧,肺高血圧
 非心臓血管系:発達異常(精神発達遅滞),発育異常,外表異常
 中枢神経系異常:神経学的欠損,てんかん
続発症
 電気生理学的異常
  心房切開:心房内修復術,心室内修復術(上室性,心室性不整脈の回旋路)
  心室切開:心室内修復術(右脚ブロック)
 半月弁,生体弁異常(弁切開後の弁逆流)
 心室流入路,流出路異常(右室流出路心室瘤)
 人工材料:パッチ,弁,導管
 心筋,心内膜(術後一過性心機能低下)
 血管系(古典的Blalock-Taussig短絡術後の上肢血流低下)
 神経系(横隔膜神経麻痺)
6 心血管修復術後の遺残症,続発症,合併症
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表20 心血管修復術後の遺残症と続発症
 先天性心疾患の長期生存に従い,疾患ごとの術後の問題点が明らかになってきた.小児期に適切な手術が行われても,各疾患あるいは術式に特徴的な形態/機能異常が年齢に伴い進行して内科治療や再手術を必要とすることがある.これらの異常は,遺残症,続発症,合併症に分類できる.遺残症は,術前より認める心血管系異常で,手術とは無関係に術後も持続する.続発症は,修復術に伴って必然的に発生し, 術後も継続する(表20).Fallot四徴修復手術後の右室流出路狭窄は遺残症,肺動脈弁逆流は続発症である.複雑心疾患には,その疾患に特徴的な遺残症,続発症が存在する.遺残症,続発症が進行するとQOLを低下させ,不整脈,心不全を生じ.内科治療,再手術を含む侵襲的治療が必要となる場合もある.続発症,遺残症,合併症の進行は個人差もあるため,長期の継続的な経過観察が必要である167),168)

①遺残症

1)電気生理学的異常
 (1)軸偏位,(2)伝導障害,(3)洞機能異常,(4)不整脈に分類できる.
(1) 軸偏位:房室中隔欠損,三尖弁閉鎖,左室性単心室では左軸偏位が認められ168),術後も持続する.一方,術前に認められる右軸偏位の多くは術後消失する.
(2) 伝導障害:房室中隔欠損の房室伝導障害は,術後も残存する.
(3) 洞機能異常:上大静脈洞欠損型の心房中隔欠損では心房ペースメーカは下方に移動することがあり,これは術後も持続する.
(4) 不整脈:心房粗細動は,心房中隔欠損,房室弁逆流に合併するが,術後も持続/再発することが多い.

2)半月弁/ 生体弁の逆流/ 狭窄
 軽度の場合は手術時に放置するため,多くは遺残病変となる.

3)血管系の異常
 大動脈二尖弁, 大動脈縮窄は大動脈中膜にcystic medial necrosisを内在し,術後も経年的に大動脈拡張を生じaortopathyとして認識される169),170).チアノーゼ性心疾患にみられる冠動脈拡張,Fallot四徴に合併する冠動脈走行異常,右大動脈弓は,術後も持続する.肺高血圧は,修復術後の重大な遺残症である.

4)非心臓血管系

 側彎等の骨格系異常,中枢神経系異常,てんかんは術後も持続する171).チアノーゼ性疾患の胆石(ビリルビン石),胆嚢炎は修復術後も発生する2)が,高尿酸血症,痛風は消失する.ばち指も軽快する.

②続発症

1)電気生理学的異常
 修復術後の不整脈,伝導障害は,合併症と続発症の混在したものが多い.

 上室性不整脈,伝導障害は心房切開線,心房内修復術操作により生じることがある.術後遠隔期にみられる心房細動は,心房修復による続発症あるいは長期容量負荷による遺残症とみなせる172).完全大血管転位の心房位血流転換術後の心房性不整脈は,続発症であるが,体心室右室機能低下の影響も受ける67)

 心室切開後の右脚ブロックは,続発症の1つであり,右脚近位部の損傷よりも心室切開そのものに起因する.左脚前枝ブロックを伴う場合は,右脚近位部の損傷と考えられる.心室切開は心室内伝導遅延部位を生じ,リエントリー性心室頻拍の発生部位となる63),173)

2)半月弁,房室弁異常
 修復術後や経皮的バルーン形成術後は,弁逆流が続発症として発生する.再狭窄を生じる場合もある.

3)複合型右室流出路狭窄
 Fallot四徴は,弁下,弁輪,弁,弁上部,分枝狭窄が混合して流出路狭窄を形成する.弁輪を越えるパッチ修復では,弁逆流が続発症となり,進行性右室拡大,機能不全を生じることがある63).Jatene手術,Norwood手術,Ross 手術は,肺動脈弁が,新生大動脈弁となり,進行性大動脈拡張,弁輪拡大,弁逆流を生じることがある173)

4)人工材料による異常
 先天性心疾患の修復術には,人工材料,生体材料が広く用いられ,耐久性,変形,易感染性等,術後多くの問題を認める.

①パッチ
 中隔欠損,流出路拡大等に用いられたパッチは,経年的に石灰化することが多い.

②人工弁
 置換弁(自己弁,生体弁,機械弁)による続発症は,弁の種類,血行動態,置換部位,年齢,性別によって異なる.Ross 手術は,大動脈弁逆流や右室流出路狭窄病変を生じる.異種生体弁は,劣化,石灰化が問題となる.

③導管

 術後平均10~ 20年に1回は,導管置換再手術を要することが多い.

③合併症
 合併症は,予期せずに生じた状態で,軽度から冠動脈閉塞,大動脈解離等死に至る合併症まで含まれる.
成人先天性心疾患診療ガイドライン(2011年改訂版)
Guidelines for Management of Congenital Heart Diseases in Adults(JCS 2011)