一般
 (1)母体適応
   1)児頭骨盤不均衡
   2)軟産道強靭
   3)狭窄,瘢痕,骨盤内腫瘍により経腟分娩が困難な時
   4)子宮破裂の危険がある時(前回帝王切開,子宮筋腫核出術等の既往)
   5)母体に危険が迫っている時(重症妊娠高血圧症候群,子癇,前置胎盤,常位胎盤
     早期剥離,肺疾患,腎疾患,肝疾患等の合併等)
   6)試験分娩,吸引分娩,鉗子分娩によっても経腟分娩不可能と考えられるとき
 (2)胎児適応
   1)胎児機能不全
   2)臍帯脱出
   3)遷延横位,胎位・胎勢・回旋異常
   4)胎児の未熟性が予測される骨盤位
母体が心疾患
 (1)人工弁でワルファリンのコントロール不良
 (2)大動脈拡張が著明な心疾患
 (3)心機能高度低下
 (4)血圧変動がきっかけで循環動態が破綻しやすい場合
 (5)有意な大動脈縮窄,高度大動脈弁狭窄
 (6)Fontan術後(経腟分娩が可能なこともある)
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5 分娩法の選択
①分娩時の循環病態

 心疾患合併妊婦において,分娩は最も循環動態が変化する時期であり,生命への危険が及ぶ可能性を念頭に,管理を行う必要がある.分娩が開始
されると,心拍出量は陣痛開始前と比べて13%増加するといわれ,子宮収縮時にはさらに34%増加し,総計約50%は増加するといわれている482).ま
た,分娩中は心拍出量の変化を減少させるために左側臥位が推奨されている483).これは,仰臥位低血圧症候群を予防するためにも有用である.

②分娩方法の選択

 一般的に経腟分娩が推奨されるが,一部の症例では帝王切開術が選択される(表32).心疾患の中で帝王切開術の適応が明らかとされるものは,
上行大動脈径の拡大を伴うMarfan症候群と,分娩前にワルファリンからヘパリンへのコントロール不良の機械弁装着の場合とされている483).その他の
ハイリスク群に属する場合でも帝王切開を考慮することがある484).母体負荷を軽減するために,分娩第2期を短縮する目的で,吸引や鉗子分娩を行うこ
ともある.中等度~高度リスク群では,少
なくとも分娩後72時間はモニター管理を行う必要がある.一般に,分娩後にもとの安定した循環動態へ戻るまでに4 ~ 6週間かかる.

 以上,「心疾患患者の妊娠・出産の適応,管理に関するガイドライン(2010年改訂版)12)を参照.
表32 帝王切開術の適応
成人先天性心疾患診療ガイドライン(2011年改訂版)
Guidelines for Management of Congenital Heart Diseases in Adults(JCS 2011)