・チアノーゼ性心疾患
・肺高血圧
・低心拍出量
・心室拡張
・上室性不整脈
・静脈系の導管内血流の流れが緩徐の場合
・高血圧(十分な治療が行われていない場合)
・塞栓血栓の既往
臨床症状* 1/WHO分類
低容量エストロゲン含有避妊薬
プロゲストーゲン単剤避妊薬
Cerazette® Implanon® Depo-Provera®
Mirena®IUS
標準的なIUD
ホルモンを用いた緊急避妊処置
生理学的心雑音1 1 1 1 1 1 1 1
心臓構造異常のない発作性
心房細動(ワルファリン使用例を含む* 2)
3 1 1 1
1(ワルファリン使用例は3* 2)1 1 1
修復術後のFallot四徴1 1 1 1 1 1 2 1
未修復心房中隔欠損3 1 1 1 1 1 1 1
拡張型心筋症4 (1)* 3 1 1
1(ワルファリン使用例は3* 2)1 1 1
中等度以上の大動脈弁狭窄2 1 1 1 1 2 3 1
僧帽弁のBjork-Shiley 弁4 1 1 1 3 3 4 1
僧帽弁の二葉弁3 1 1 1 3 3 4 1
チアノーゼ性心疾患(肺高血圧症を伴わないもの) 4 (1)* 3 1 1
2(ワルファリン使用例は3* 2)2 3 1
Eisenmenger 症候群や肺高
血圧症4 (1)* 3 1 1 1 4(3* 4) 4 1
Fontan循環(ワルファリン
使用例を含む* 2) 4 (1)* 3 1 1 3 4(3* 4) 4 1
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3 避妊
①カウンセリング

 性成熟期に入った患者は,妊娠・避妊に関するカウンセリングを必要とする.避妊に関するカウンセリングは,母体・児のリスクから判断すべきであり,カ
ウンセリングを行う人の個人的観念にとらわれないことが大切である.妊娠を望まない者あるいは妊娠は望ましくないとされる者を含め,心疾患を持つす
べての女性にそれぞれに適した避妊法をすすめる.

 妊娠が危険と考えられる患者,または妊娠出産後の経過観察中に心機能の悪化がみられ,次回の妊娠をすすめられない患者には,避妊の必要性,ま
た避妊方法について,循環器担当医と産婦人科医の双方から本人およびその家族に,個々の状況に即した最適な避妊法を,十分説明し同意を得ておく
ことが望ましい.

②避妊法(表38)504)

 避妊に失敗すれば重大な転帰がもたらされるため,心疾患の重症度が高いものほど,効果の高い避妊法が推奨される.また,エストロゲン製剤の易血
栓性等,副作用に対する厳重な注意が必要であり,適切な避妊法の選択が不可欠である.

1)卵管結紮
 永久不妊術であるが,再疎通させることはできない.

①帝王切開時の卵管結紮
 最も簡単で確実.

②経膣分娩後の卵管結紮
 分娩翌日,もしくは2日後に実施.

③膣式卵管結紮術
 子宮内掻爬による妊娠初期の人工妊娠中絶術に続いて膣式に卵管結紮術が可能.

④内視鏡下卵管結紮術
 小切開で手術が可能.Eisenmenger症候群患者22例の卵管結紮術において,1 例の死亡と1 例の循環不全を認めたとの報告がある111),505)

2)子宮内避妊器具(IUD/S; Intrauterine Device/System)
 手術操作は容易で,比較的安全.抜去すれば再び妊娠が可能.約2%に骨盤内感染症があり,卵管性不妊となる危険があり未産婦には推奨できない
505).感染性心内膜炎のリスクがあり505),506)骨盤内感染症や感染性心内膜炎を発症時は,除去.抗凝固療法を行っている患者では子宮出血が問題と
なることもある505).高い避妊効果が期待できるプロゲストーゲン徐放性子宮内避妊器具も発売されている.

3)低容量エストロゲン含有避妊薬
 避妊効果は高いが,副作用として,水分貯留,血栓症,血圧上昇等が問題.チアノーゼ性心疾患では,血栓の発症が多い506).Eisenmenger症候群で
は心機能悪化とチアノーゼの増強が見られ,血栓症による死亡も認められている111).低容量エストロゲン避妊薬を控えるべき疾患を表39に提示する
505)

4)プロゲストーゲン単剤避妊薬
 排卵阻害作用がないため,毎日ほぼ同時刻に使用しなくてはいけない.血栓リスクを高めない点,エストロゲンを用いた避妊法に比して安全である.

5)コンドーム
 確実に正しく装着していれば,避妊効果は高い.

6)基礎体温
 本人の自覚のみに任せるので確実性はない.

7)パートナーの避妊手術
 パートナーの女性が死亡することもあるので積極的にはすすめられない.

 以上,「心疾患患者の妊娠・出産の適応,管理に関するガイドライン(2010年改訂版)12)を参照.
 
表38 臨床症状別にみた避妊法の使用基準に関するWHO分類
WHO分類群1:使用制限なし
WHO分類群2:全般に,使用の有益性が理論上または実質上のリスクを上回る
WHO分類群3:全般に,理論上または実質上のリスクが有益性を上回る
WHO分類群4:健康上のリスクが極めて高い
* 1 詳細については各避妊法の項を参照.
* 2  ワルファリン使用例の場合,Depo-Proveraの使用期間中はINR(国際標準比)をモニタリングする必要がある(エストロゲン・
         プロゲストーゲン合剤の併用で変化する可能性がある).Depo-Provera使用例では,限局性の血腫を来たすおそれがある(本文を参照).
*3  安全とされているが,プロゲストーゲン単剤避妊薬の効果は限られてるため,妊娠によって特定のリスクのある者では使用を制限する.
*4  他に適切な避妊法がなく,妊娠のリスクが使用に伴うリスクを上回ると判断された場合には使用してよい.
         IUS:子宮内避妊システム IUD:子宮内避妊器具
表39 低容量エストロゲン避妊薬を控えるべき疾患
成人先天性心疾患診療ガイドライン(2011年改訂版)
Guidelines for Management of Congenital Heart Diseases in Adults(JCS 2011)