1.絶対的除外条件
 【1】肝臓,腎臓の不可逆的機能障害
 【2】活動性,全身性感染症
 【3】薬物依存症(アルコールおよびニコチン依存症を含む)
 【4】悪性腫瘍
 【5】HIV抗体陽性
2.相対的除外条件
 【1】肝臓,腎臓の可逆的機能障害
 【2】活動性消化性潰瘍
 【3】合併症を伴ったインスリン依存性糖尿病
 【4】高度胸郭変形や胸膜に広範な癒着や癩痕
 【5】高度筋神経疾患
 【6】極端な低栄養または肥満
 【7】リハビリテーションが行えない,またはその能力が期待できない症例
 【8】本人および家族の理解と協力が得られない
 【9】精神社会生活上に重要な障害
1.肺外に活動性の感染巣が存在する
2.他の重要臓器に進行した不可逆的障害が存在する
悪性腫瘍  骨髄疾患  冠動脈疾患  高度胸郭変形症  筋・神経疾患
肝疾患(T-Bil >2.5mg/dL)
腎疾患(Cr>1.5mg/dL,Ccr<50mL/min)
3.極めて悪化した栄養状態
4.最近まで喫煙していた症例
5.極端な肥満
6.リハビリテーションが行えない,またはその能力が期待できない症例
7.精神社会生活上に重要な障害の存在
8.アルコールを含む薬物依存症の存在
9.本人および家族の理解と協力が得られない
10.有効な治療法のない各種出血性疾患および凝固能異常
11.胸膜に広汎な癒着や癒痕の存在
12.HIV(human immunodeficiency virus)抗体陽性
表53に示す疾患で心不全もしくは呼吸不全により,心肺同時移植でなければ救命ないし延命の期待が持てない以下の場合を適応
とする
1. 進行した肺疾患により,肺移植の適応が考えられる症例において,外科的修復の難しい先天性心疾患や高度心機能低下を伴い,
最大限の内科的治療によってもNYHA Ⅲ度からⅣ度に相当する臨床症状から脱しない場合
2. 高度心不全を呈し心移植の適応が考えられる症例において,薬剤抵抗性の不可逆的肺高血圧[一酸化窒素の吸入またはプロス
タサイクリンの静脈内投与でTranspulmonary gradient(TPG)が15mmHg以上,または肺血管抵抗が8wood unit 以上の症例]
を伴う場合
3.年齢は55歳以下が望ましい
4.本人および家族の心肺同時移植に対する十分な理解と協力が得られている
心肺同時移植の適応となる疾患は,移植以外では救命ないし延命の期待が持てない以下の重症疾患とする
1.心機能低下を伴う原発性肺高血圧症を含む肺移植適応肺疾患
2.肺高血圧を伴う先天性心疾患(Eisenmenger症候群)で外科的修復が困難か,心機能低下を伴うもの
3.肺低形成を伴う先天性心疾患で外科的修復が困難か,心機能低下を伴うもの
4.その他,心肺同時移植適応検討小委員会が認めたもの
1.治療に反応しない慢性進行性肺疾患で,肺移植以外に患者の生命を救う有効な治療手段が他にない.
2.移植医療を行わなければ,残存余命が限定されると臨床医学的に判断される.
3. レシピエントの年齢が,原則として,心肺移植の場合45歳末満,両肺移植の場合55歳末満,片肺移植の場合には60歳末満である.
4. レシピエント本人が精神的に安定しており,移植医療の必要性を認識し,これに対して積極的態度を示すとともに,家族およ
び患者をとりまく環境に十分な協力体制が期待できる.
5. レシピエント症例が移植手術後の定期的検査と,それに基づく免疫抑制療法の必要性を理解でき,心理学的・身体的に十分耐えられる.
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2 肺移植・心肺移植の適応基準と登録
 肺移植の適応は,一般的適応指針(表52)のごとく,移植以外の最大限の治療に反応しない慢性進行性肺疾患で,肺移植以外に患者の生命を救う有
効な治療手段がなく,残存余命が限定されると判断される場合が適応となる.我が国での年齢のめやすは,心肺移植55歳末満,両肺移植55歳末満,片
肺移植60歳末満とされている.

 最近では,肺移植の成績や肺移植後の右心不全の管理が向上したこと,ドナー不足がさらに深刻になってきていること(心肺移植では,1人の人を救うの
に3つの臓器が必要なため)から,心肺移植の適応疾患が限定され,片肺または両側片肺移植の適応が拡大してきている.また,心肺移植の適応疾患の
生命予後は,心または肺単独の移植の適応疾患の予後より良いことが多いので,適応の判定には慎重を要する.ドナー不足の深刻な我が国では,心肺
移植の適応基準は厳格である(表53,54)

 肺血管系の異常に起因した疾患に肺移植を行う場合に,その病変が片側性でない限り,両側片肺移植を行うことが望ましい.そのため,成人先天性心疾
患に伴う肺移植の術式は両側片肺移植または生体両側肺葉移植を行うことが多い607),608)

① 成人先天性心疾患に関連した肺移植・心肺移植の適応基準

1)Eisenmenger 症候群
 肺移植または心肺移植の適応を決めるためには,本症の自然予後を知る必要があるが,患者の余命を予測することは困難である.下記(1)~(3)に示す
ような条件を満たせば,2年以内に死亡する確率が高いので,適応を検討する111),604),611). 先天性心疾患の中で,Eisenmenger症候群とそれ以外を比
較すると,前者が有意に予後不良である.しかし,Eisenmenger症候群に限ると,たとえ単純先天性心疾患の合併例でも,心肺移植と成績に差はなく,両
側片肺移植にするか,心肺移植にするかの適応判定は慎重に行う必要がある(http://www.ishlt.org/registries/slides.asp?slides=heartLungRegistry
参照).
(1)心不全(右・左単独,両心不全の場合あり)
 ● 薬剤投与によってもNYHA機能分類Ⅲ~Ⅳから改善しない場合
 ● 臓器障害(肝腎機能障害:ただし不可逆的)が認められるようになった場合
(2)難治性の心室性不整脈
(3)頻回の喀血(気管支動脈栓塞術無効例)

2) 肺実質・肺血管の低形成,高度肺静脈狭窄を伴う先天性心疾患
 在宅酸素療法を行っても,NYHA機能分類Ⅲ~Ⅳから改善しない場合

3)先天性心疾患に起因した肺動静脈瘻
 在宅酸素療法を行っても,NYHA機能分類Ⅲ~Ⅳから改善しない場合

②肺移植・心肺移植の適応除外条件

 多くの適応除外条件が具体的に設けられている(表55,56).また,肺移植レシピエント選択の国際ガイドライン612)では,HB抗原陽性例,肝生検で肝疾
患を認めるHCV陽性例も禁忌とされている.

③成人先天性心疾患の肺移植・心肺移植の現状

 国際心肺移植学会の統計(1995年1月~2009年6月)によると603),成人の片肺移植の適応疾患で,先天性心疾患は,0.3%,成人の両肺/両側片肺移
植の適応疾患は,先天性心疾患1.3%であり,先天性心疾患による肺移植症例は多くない603).それに対して,成人の心肺移植の適応疾患に先天性心疾
患の占める割合は大きい.1982~1995年(1,510例)の適応疾患は,先天性心疾患32.5%(490例),特発性肺高血圧30.0%(453例)であったのに対し,
2006年1月~ 2009年6 月(675例)では先天性心疾患43.6%(294例),特発性肺高血圧24.0%(162例)であった603). 

 (http://www.ishlt.org/registries/slides.asp?slides=heartLungRegistry を参照).先天性心疾患合併例の心内修復術と肺移植を同時に行った症例は
少ない.心室中隔欠損613)を合併したEisenmenger症候群1例で脳死両側片肺移植が行われ,心房中隔欠損を合併した特発性肺高血圧614)と心房中隔
欠損によるEisenmenger症候群の各1例で生体両側肺葉移植が実施された.
 
表52 肺移植のレシピエントとしての一般的適応指針
(肺・心肺移植関連学会協議会「肺・心肺移植レシピエントの適応基準」より)
表53 心肺同時移植の適応疾患
(日本循環器学会心肺同時移植適応検討小委員会「心肺同時移植レシピエントの適応基準」より)
表54 心肺同時移植の適応条件
(日本循環器学会心肺同時移植適応検討小委員会「心肺同時移植レシピエントの適応基準」より)
表55 肺移植の適応除外条件
(肺・心肺移植関連学会協議会「肺・心肺移植レシピエントの適応基準」より)
表56 心肺同時移植の適応除外条件
(日本循環器学会心肺同時移植適応検討小委員会「心肺同時移植レシピエントの適応基準」より)
成人先天性心疾患診療ガイドライン(2011年改訂版)
Guidelines for Management of Congenital Heart Diseases in Adults(JCS 2011)