①非手術歴
不完全型の自然歴は,重度の房室弁逆流を合併する場合を除いては,大きな二次孔タイプの心房中隔欠損と大きく変わらない684),685).すなわち一部
の症例では肺血管病変を合併し,肺高血圧を呈し,中年以降は心房性不整脈の合併が多く,これとともに自覚的にも状態が悪化する場合がみられる.本
症の予後は,房室弁逆流や,刺激伝導系の異常に伴う合併症の存在のため,通常の心房中隔欠損に比較してやや不良である686),687).完全型の場合
は,房室弁逆流,肺高血圧等のため,高度の心不全を伴うため長期生存が難しい688).
②修復術後歴,術後長期予後
心内修復術後の予後は比較的良好だが,術後の遺残房室弁逆流が問題となる場合がある.術後長期遠隔期は,左側房室弁逆流,大動脈弁下狭窄,
房室ブロック,肺高血圧の進行等により生命予後は一般よりやや悪い.有意の遺残短絡や遺残房室弁逆流を認め,逆流が顕著ないしは進行性に増加す
る場合は,僧帽弁置換術を含めた再手術を考慮する.高度房室ブロックが遠隔期に出現することがある.術後遠隔期の合併症の多くは房室弁逆流に対す
る治療の如何によって左右される4),689).すなわち房室弁逆流遺残が重度な場合には心室機能不全,心房細動等の上室性不整脈の頻度が高い.また
高度房室ブロックが遠隔期に出現することがあり注意深い経過観察を必要とする.まれではあるが,術後に大動脈弁下狭窄が進行することがある(5~
10%)685),690).