乳児期手術例ではほぼ全例で縮窄部切除+端々吻合法や鎖骨下動脈フラップ法等自己組織のみの大動脈再建が可能である.大動脈弓低形成を伴う
症例では拡大大動脈弓再建術を行う.学童期以降は縮窄部切除+端々吻合法ができず,人工血管置換を余儀なくされる症例も存在する750).成人期手
術は脊髄保護(対麻痺予防)の観点より左心バイパスやF-Fバイパス等の補助手段を併用する必要がある.術後に上下肢ともに高血圧を生じる症例があ
り,注意深い周術期管理が必要である.パッチ拡大法は遠隔期に動脈瘤が高頻度に形成されるため現在ではほとんど行われていない751).
経皮的バルーン拡張術も行われるが,遠隔期に動脈瘤形成が見られるとの報告もあり,未手術の大動脈縮窄に対する初回治療としてのバルーン拡張
術は一般的な治療法として確立していない752).近年,成人の非手術例に対するステント留置も試みられ,良好な成績が報告されているが,長期成績は
不明である752)−754).
手術成績は新生児・乳児例755),756),成人例757),758)ともに良好である.複雑心疾患を合併しない症例の生命予後は比較的良好である.術後遠隔期合
併症には,修復部再狭窄や動脈瘤,高血圧,大動脈弁膜症,早発性冠状動脈病変等が挙げられる734),735),737),750),757),759).
再狭窄例では心不全,高血圧に加え,上下肢血圧差20mmHg以上がカテーテル治療または外科的修復の適応とされる760).まずカテーテル治療が行
われ,カテーテル治療の無効例に外科的修復術が選択される761),762).縮窄部の人工血管置換術が行われるが,癒着や側副血行による出血が危惧され
る場合に,上行大動脈- 下行大動脈間に非解剖学的バイパス術が行われることもある750),763).乳児期の人工血管を用いた弓部再建術では,身体発育に
伴い相対的な狭窄が進行する.この場合も人工血管の再置換術もしくは非解剖学的バイパス術が選択される764),765).
手術時の年齢が成人期の場合は術後に血圧が正常化しないことが多い766),767).