①初回手術,再手術の適応,術式,タイミング(表68)
中等度以上の三尖弁逆流は弁置換の適応となる.弁形成術は困難で,三尖弁置換術を行う.三尖弁置換術は,右室駆出率43%以下の場合は,予後
が悪いとされ,非可逆的な心筋病変を伴う右室機能低下を生じる前に行うことが望ましい793),794).
心外導管修復後は,導管狭窄の進行のため,術後10~ 15年で再手術となることが多い782),783).しかし,中等度以上の三尖弁閉鎖不全合併例では,
三尖弁置換術を行わずに肺動脈狭窄を解除すると,心室中隔の左室方向への変異が起こり,三尖弁閉鎖不全が悪化する場合があり注意が必要であ
る.
高度房室ブロックのため,ペースメーカ装着,交換が行われる777).
②修復術後歴
1)修復術後長期遠隔成績
左室肺動脈心外導管吻合術後の遠隔期QOLは良好だが,経年的に三尖弁逆流,房室ブロック,導管機能低下,右室機能低下を生じる.術後10年生
存率は55~85%で,死亡原因は,再手術,突然死,右室機能不全,不整脈である104),580),778),785),794).再手術は,10年で約1/3に認め,主に導管狭
窄,三尖弁置換術である.一般的に10~ 20年ごとに導管形成術を行うことが多い.
完全房室ブロックにより,突然死したり,心不全が悪化したりすることがある778),785).頻拍型不整脈は経年的に増加し,体心室機能低下を反映する
104).
Double switch手術の遠隔期成績の報告は未だ少ないが795)−798),術後生存率は,10年で90~ 100%,15年で,75~ 80%,遠隔期死亡のリスク因
子は三尖弁閉鎖不全の残存とされている.多くはNYHA機能分類Ⅰ−Ⅱであるが,ペースメーカ装着を含む再手術率は術後10年で10~ 20%程度であ
る.
2)右室機能不全
加齢,三尖弁逆流,合併心異常,心臓手術が悪化因子とされる785).三尖弁逆流は,右室拡大,左室圧低下,開心術後に増悪する.
3)感染性心内膜炎
感染性内膜炎予防が必要な場合が多い799).
4)体心室右室機能低下,三尖弁閉鎖不全
肺動脈絞扼術による左室トレーニング後のdouble switch手術798)が考慮されるが,左室トレーニングに耐えられる必要がある.しかし,左室機能低下
を生じることが多くDouble switchに到達できる例は少ない.成人での成功例は今のところ報告されていない.左室圧が低い場合は,肺動脈絞扼術を先
行するが,三尖弁閉鎖不全は肺動脈絞扼術後に改善する(左室圧上昇に伴う心室中隔偏位が,弁閉鎖に良好に作用する)798),800).