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 マルファン症候群では,大動脈径が50mm以上(自己大動脈温存手術がやりやすいため,40mm以上の拡張を適応とする施設もある)あるいは継続的拡張
が認められる場合が手術適応とされる.人工弁と人工血管を組み合わせたComposite graftを用いるBentall手術,あるいは自己弁温存大動脈基部置換術
(David法,Yacoub法)を行う4),5),822),823).小児期に施行したロス手術後(多くは大動脈二尖弁)は,術後,大動脈径の増大,大動脈弁逆流の出現/悪化を
認めるため,長期間の経過観察が必要である824),825).チアノーゼ型先天性心疾患修復術後の大動脈拡張に対する大動脈形成手術の施行基準はないが,
大動脈径が55mmを超えた拡張が認められる場合に,大動脈置換術形成術が推奨される4),5).また,大動脈弁置換術は比較的多く行れるが,肺動脈弁置
換術と同時に行う場合もある.今後,経皮的大動脈ステント治療が行われる可能性がある.

 左心低形成症候群, 完全大血管転位Jatene術後,Fontan術後も,大動脈弁逆流,大動脈拡張が多く認められている806),808),809),821),826).これらのチ
アノーゼ型先天性心疾患も,加齢とともに,大動脈拡張,大動脈弁逆流が増悪する可能性があり,大動脈径,大動脈弁の持続的な経過観察が推奨される.

 大動脈二尖弁での手術成績は解離を起こしている場合以外は良好だが,弁劣化による再弁置換術を必要とする.Warfarinの服用を必要とすることが多く,
定期的な経過観察を必要とする.マルファン症候群,大動脈二尖弁を除くと手術例は非常に少なく,手術成績,予後等は明らかではない.
6 手術
成人先天性心疾患診療ガイドライン(2011年改訂版)
Guidelines for Management of Congenital Heart Diseases in Adults(JCS 2011)