心外導管は二心室心内修復術において,右室を肺動脈へ吻合する際に使用される.対象疾患は,主肺動脈を認めない心室中隔欠損兼肺動脈弁閉鎖,
冠動脈起始異常のため右室流出路再建が困難な症例,総動脈幹症,一部の両大血管右室起始である.完全大血管転位に対するRastelli術1015),修正
大血管転位に対するダブルスイッチ術でも使用される(これらは各疾患の項を参照).

 欧米では主に凍結処理された同種弁付き導管が主流で1016)−1018)あるが,遠隔期の導管狭窄は避けられない.異種弁付き導管1019)や自己心膜を用い
た心外導管や1020),心内導管を使用しない手術であるREV(Lecompte)法やBarbero-Marcial法が考案されている1021),1022).我が国は同種弁の使用が
困難で欧米と事情が異なるため,異種心膜やGore-tex® sheet等の人工布,人工血管や自己心膜を使用して導管を作成し,導管内に弁を作成することが
多い.弁なし導管を使用することもある1023),1024)

 心外導管の最も大きな問題は遠隔期における狭窄で,導管内や吻合部での内膜の肥厚・石灰化,導管の屈曲,弁の石灰化により生じる.また弁閉鎖
不全による右心不全の進行を認める場合もある.細菌性心内膜炎の合併も少なくない.

 心外導管機能不全による右室の圧負荷・容量負荷は右房・右室心筋障害を引き起こし右心不全や右房・右室を起源とする不整脈を誘発する.完全大血
管転位では左室機能障害も問題となる1025).主要大動脈肺動脈側副血管を合併する心室中隔欠損兼肺動脈閉鎖では遺残肺高血圧を合併することが多
く,右心不全を来たしやすい1026),1027)
1 解剖学的特徴と病態生理
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成人先天性心疾患診療ガイドライン(2011年改訂版)
Guidelines for Management of Congenital Heart Diseases in Adults(JCS 2011)