①胸部X 線
APCでは拡大した右房のため心陰影が拡大する.TCPCでは一般に心陰影は小さいか正常であるが,心外導管術後では導管陰影が心陰影と重な
り心胸郭比は必ずしも心陰影を反映しない.導管の石灰化を認める場合がある.有意な肺動静脈短絡を有する患者では異常陰影を肺野に認める場
合が多い.
②心電図
背景疾患の特色を示す.APCではP波増大が見られる1041).幅広いQRS時間は心機能や運動耐容能低下と関連する簡便な指標である1042),
1043).
③心エコー法
経胸壁心エコー法で体心室収縮能や房室弁閉鎖不全はある程度判断できる.しかし,静脈系の狭窄の判断は困難である.房室弁閉鎖不全や血栓
の評価は経胸壁心エコー法では困難で,経食道心エコー法の評価が推奨される.
④ MRI・CT
心房,心室の評価のみならず,MRI ではガドリニウムを用いた遅延心筋画像により心筋線維化を,時相コントラストMRI で非侵襲的に大動脈肺動脈
副側血行を介した左右短絡量を正確に評価可能である245).心室筋線維化は心室性不整脈と心機能低下との関連が示唆され1044),心不全を有する
Fontan手術後の心血行動態評価に有用と期待される.
⑤血液生化学・神経体液性因子
低ナトリウム血症を示す割合は高い1045).肝鬱血を反映しビリルビンやγ-GTPは高値を示す場合が多いが1034),ALTやASTは上昇しない場合が多
い.血清脂質ではコレステロール値は低い1038).血中ノルエピネフリンやBNP値は上昇を示す場合が多いが,APCのBNPはTCPCより有意に高く心
房由来とされる345).また,高い血中ノルエピネフリンやBNPは心事故の予測因子である1046).
⑥運動負荷試験
重度の心臓自律神経活動の異常を認めることから心拍応答は低下し,peak VO2 からみた運動耐容能は健常者の50~ 60%である212),213).運動
負荷試験から得られる心肺機能指標は心事故と関連するが,死亡は予測しないとされる108).運動負荷試験中の不整脈出現と予後との関連は不明
である.
⑦ホルター心電図
不整脈は最も頻度の高い術後遠隔期合併症である.房室2:1 伝導等は無症状なことがあり定期的な検査が望ましい.
⑧心臓カテーテル検査
心形態や機能評価は心エコー法,MRI やCTが非侵襲的で,画像の解像度も良いため,心内圧測定やカテーテル治療を要する場合を除き心臓カ
テーテル検査の頻度は減少している.しかし,Fontan術後の心血行動態は不明な点も多く,綿密な心不全管理,冠動脈異常,肺動静脈短絡,大静
脈肺静脈短絡評価には有用な情報を提供する.