15 チアノーゼ型先天性心疾患,未手術あるいは姑息手術後
チアノーゼ型先天性心疾患
 
 未修復あるいは姑息手術後のチアノーゼ型先天性心疾患では,低酸素血症とそれに付随する全身的系統異常を伴う(「チアノーゼ型先天性心疾患に
みられる全身系統的異常」の項参照).心室中隔欠損兼肺動脈閉鎖やFontan手術に至らない単心室血行動態が多くを占める.単心室群では,罹患率
も高く予後も不良であるが,適度な肺動脈狭窄を伴いチアノーゼが軽度で血行動態の異常が少ない場合には,Fontan術後よりもQOLが良い場合があ
る.

 未手術か,あるいは姑息手術でとどまり機能的根治手術が困難な症例の多くは,肺動脈の低形成あるいは閉塞,変形,ないし高い肺血管抵抗値によ
る.これらの異常は,先天性ないし出生後の肺血管閉塞性病変の進行により,あるいは姑息手術(肺動脈絞扼術や体肺動脈短絡術等)の合併症として
起こる.肺動脈の変形・狭窄・閉塞については,カテーテルインターベンション,ステント留置,心膜パッチによる肺動脈拡大術等により修復されれば,機
能的根治手術ができる可能性がある.また,高い肺血管抵抗値に対して,肺血管拡張薬により肺血管抵抗が低下した場合,機能的根治手術を検討で
きる可能性がある.

 未手術あるいは姑息手術後に長期にチアノーゼが持続した先天性心疾患では,低酸素に対する生体の反応として,体肺動脈側副血管が発達すること
が,しばしば問題となる.脆弱な新生血管の破綻は,喀血の原因となる.また,原疾患に対する外科的治療について検討する場合,側副血管の存在に
より,術視野が制限されること,心筋保護薬剤が過剰にwash outされてしまうこと,左心系に容量負荷がかかること等の問題点を認識し,術前に側副血
管のサイズ,部位,肺野への分布について評価する必要がある.術前カテーテルによる側副血管の閉塞,太い機能的側副血管の外科的unifocalization
(大動脈肺動脈側副血行路単一化手術),結紮が考慮される.
 
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心室中隔欠損兼肺動脈閉鎖 単心室血行動態,肺動脈閉鎖・狭窄
成人先天性心疾患診療ガイドライン(2011年改訂版)
Guidelines for Management of Congenital Heart Diseases in Adults(JCS 2011)