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2 再手術
①再手術適応と術式

1)肺動脈弁機能不全(閉鎖不全・狭窄)
 右室流出路再建に用いられた心外導管の機能不全,あるいは肺動脈弁交連切開や弁輪を越える流出路パッチ拡大術後の肺動脈閉鎖不全は再手術の
頻度が高い.肺動脈分枝狭窄を伴う場合はバルーン拡張術を行い,無効であれば再手術時の修復を検討する.遺残肺動脈狭窄でも再手術を考慮すること
がある6),8).慢性的な肺動脈弁閉鎖不全は右室拡大や収縮力低下を引き起こし不整脈基質となることが示されており8),582),肺動脈弁閉鎖不全を確実に
防止することが肝要である.十分大きなサイズの人工弁を用いて弁置換あるいは弁付き心外導管による再建が望ましい.成人期では右心系に用いられた
生体弁は長い耐久性を持つことが期待でき抗凝固療法が不要なことから生体弁等組織弁を用いた肺動脈弁置換が望ましい56),583).今後カテーテルによ
るステント付き弁移植(PPVI; percutaneus pulmonary valve implantation) が日本でも導入されれば重要な選択肢となり得る584)

2)房室中隔欠損術後の房室弁閉鎖不全
 心室間の遺残短絡とともに房室中隔欠損術後の房室弁閉鎖不全に対する再手術の頻度が高い.房室中隔欠損の左側房室弁閉鎖不全では縫合された
前尖裂隙(クレフト)の肥厚短縮,接合部の肥厚,腱索の肥厚短縮あるいは著明な弁輪拡大等を認め,弁形成術は困難なことが多い585)

3)Fontan 手術後
 Fontan手術では1990年以前の標準的な術式であった右房−肺動脈結合Fontan術後の遠隔期に著明な右房拡張を来たしFontan循環の破綻や心房内
血栓,頻拍性不整脈合併を認める症例が増加している.こうした症例に対して拡張した右房壁を可及的に切除して縮小し,両方向性Glenn手術と下大静脈
−肺動脈間を人工血管で再建するextracardiac TCPC conversionはFontan循環を改善するとの報告がなされ396),その症例数は我が国でも年々増加して
いる.洞機能低下もしばしば認められDDD型ペースメーカ移植や心房細動歴を有している症例では同時メイズ手術が適応となる症例も多い.再手術に際し
ては,既往手術の内容や解剖学的位置関係をMRI やCT等の方法で把握しておくことが重要である567)

②不整脈,術中アブレーション

 初回手術,再手術を問わず成人期では種々の不整脈の合併が多く,不整脈に対する同時処置をオプションとして考慮する必要がある.心房中隔欠損や
Ebstein病,右房−肺動脈結合Fontan術後等で心房性頻拍の合併が多く認められる.またFallot四徴や大血管転位で右室切開を置いた症例では右室起
源の心室性頻拍を認めることがあり,突然死の一因と考えられている.術前の電気生理学的検査に基づき高周波焼灼デバイスやcut & saw法,冷凍凝固
(cryoablation)を用い,心房性頻拍に対しては三尖弁峡部ブロック,肺静脈隔離術,両房メイズ術,右房メイズ術を行う.右室起源の心室性頻拍に対して
は最早期興奮部位の焼灼,切除や興奮旋回隘路のブロックを行う.
 
成人先天性心疾患診療ガイドライン(2011年改訂版)
Guidelines for Management of Congenital Heart Diseases in Adults(JCS 2011)