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5 心臓移植後の管理
①心臓移植後の免疫抑制療法

 現在の免疫抑制療法は多剤併用療法が汎用されている.多くの施設では,(1)カルシニューリン阻害薬:シクロスポリンまたはタクロリムス,(2)核酸合成
阻害薬:ミコフェノール酸モフェチルまたはアザチオプリン(多くの施設でミコフェノール酸モフェチルが主流),(3)ステロイドの3種類を併用した標準的三薬併
用療法(standard triple therapy)が行われるが,心臓移植対象者は待機中の低心機能がもたらす腎前性腎不全(腎機能低下)を伴っていることがあるた
め,その時は抗胸腺細胞グロブリンや抗CD25 モノクローナル抗体であるバシリキシマブを用い,カルシニューリン阻害薬を数日遅らせて使用することにより
腎機能を保持する.またPRA(panel reactive antibody)高値の場合にも抗胸腺細胞グロブリンを用いる.

 術後の拒絶反応が首尾よくコントロールされてくれば,術直後から用いられてきた3薬のうち,ステロイドは,その副作用を考慮して早期に中止または漸減さ
れる.またカルシニューリン阻害薬であるシクロスポリンやタクロリムスも漸減されていくが,移植後リンパ増殖性疾患等の悪性腫瘍が形成された場合等の
特別な場合を除いて中止されることはない.

 移植後リンパ増殖性疾患や中等度以上の腎機能障害を来たした場合には,カルシニューリン阻害薬で腎毒性のあるシクロスポリンやタクロリムスを減量し
て,そこにm-TOR阻害薬であるエベロリムスを併用することもある.
成人先天性心疾患診療ガイドライン(2011年改訂版)
Guidelines for Management of Congenital Heart Diseases in Adults(JCS 2011)