拒絶反応は心筋組織に炎症が生じ,心筋炎と同様に,発熱,息切れ,浮腫,体重増加,安静時頻脈,不整脈,ギャロップリズム等を認める.これらの症状
を認める場合は,既にかなり進んだ状態で,中等度に進行した拒絶反応でも症状を認めないこともある.このため,心筋生検で確定診断を行うことが必要で
ある.
①心筋生検
心筋生検による拒絶反応の病理組織学的診断は,拒絶反応の主体である細胞浸潤と細胞障害をその程度と広がりによってgradingし,Grade 1R(mild),
Grade 2R(moderate),Grade 3R(severe)とされる.
心臓移植後の心筋生検組織は右室の異なる場所から最低3 個が必要である598).
②心エコー法
心室壁内細胞浸潤と浮腫がもたらす,(1)心室壁厚,心室重量や心室容積の増加と心室壁厚増加率(%thickening)の低下,(2)収縮力(%FS)の低下,
(3)僧帽弁または三尖弁逆流の新たな出現または増量,(4)拡張機能低下としての急速流入(E)波のピークからの減速時間(DcT)や等容性拡張時間の減
少,(5)心嚢液の新たな貯留とされている.これらの所見が揃えば心筋生検を施行せずに,拒絶反応に対する治療を開始して良いが,不確定の場合は,心
筋生検にて診断確定する必要がある.