成人先天性心疾患には,高度肺高血圧や肺実質・血管の低形成のため修復術ができず,成人期に肺移植の適応となる症例も少なくない603)−606).また,修復術後例でも,後に肺高血圧が進展して,肺移植の適応となる症例も認められる.成人先天性心疾患の増加に伴い,今後,肺移植の適応例が増加することが予想される.原疾患が単純先天性心疾患である場合や,既に修復術が施行された場合には,肺移植(脳死または生体)の適応となるが,原疾患が複雑先天性心疾患であったり,心機能が不良であったりする症例は,心肺移植の対象となる.

 Sprayら607),608)が,先天性心疾患において積極的に心内修復と両側片肺移植を行うようになってから,現在では単純先天性心疾患に伴うEisenmenger症候群の多くは両側片肺移植の適応となっている.我が国でも心房中隔欠損を合併した特発性肺高血圧の男児に生体肺葉移植と心房中隔欠損閉鎖609), 大きな心室中隔欠損によるEisenmenger症候群の成人例に両側片肺移植と心室中隔欠損閉鎖が行われた610).単純先天性心疾患における心内修復と両側片肺移植の併用術は,ドナー不足の極めて厳しい我が国でも選択できる手術法である.片肺と心臓を移植する報告606)も散見されるが,そのような症例は多くはない.
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成人先天性心疾患診療ガイドライン(2011年改訂版)
Guidelines for Management of Congenital Heart Diseases in Adults(JCS 2011)