免疫抑制薬は心臓移植と同様3剤併用療法が基本である603)(表57).ただし,気管縫合不全を防ぐために術後早期にはステロイドを使用せず,抗胸腺細
胞グロブリンを使用する施設が多い.拒絶反応は心と肺で別々に起こるため,適宜,心臓は心筋生検を,肺は各種画像検査と気管支鏡下(またはCTカイド
下)肺生検を行い病理学的に判定する.気管支肺胞洗浄液の細胞分画も参考にする.肺の拒絶反応は心臓よりも発生しやすく,約33%の患者に発生すると
報告され,多くは術後4 週以内に起こる.
慢性期には各臓器の移植と同様,移植後冠動脈硬化症や閉塞性細気管支炎(BO; Bronchiolitis Obliterans)が問題で,遠隔期の主な死因となり,有効
な治療法は再移植しかない.日常の呼吸機能測定(特に一秒率検査)や定期的な冠動脈内エコー検査が発見に有用である.
ステロイド中心の時代に比較して,感染症が軽減し,創傷治癒が改善したが,心臓移植後よりも高頻度かつ重症の感染症,特に肺感染症に罹患するので
注意をする.移植肺は解剖学的に神経もリンパ系も遮断されているので,心臓のみの移植よりも肺感染症に罹患しやすい.遠隔期に閉塞性細気管支炎を来
たすと,肺感染症の危険性がさらに増加する.