1 循環器小児科外来から成人先天性心疾患外来への移行
 
 日本には成人先天性心疾患専門施設が十分ではなく,先天性心疾患と関わりの少ない循環器内科医が成人先天性心疾患を診療せざるを得ないことも
まれではない.このため,紹介された患者が,循環器内科で診察を受けても,その後,循環器小児科に戻ってしまうこともある.したがって,循環器内科へ
のスムースな「移行診療」は,患者の希望するところでもあると同時に,患者の循環器内科への通院拒否につながらないようにするため,小児循環器科
医が責任を持って行わねばならない重要な作業である650),656),657).診療システムの現状や社会状況を考慮すると,患者の病状,年齢,成熟度,病気
の理解度にも左右されるが,早い患者では中学に入学する12歳頃より,また遅くとも小児科病棟への入院が困難となる15歳頃までには病気の説明を始
める必要がある.同時に,今後の生活指導,女性では妊娠や出産に関連した注意事項を含めた「移行」診療を開始し,高校を卒業して親元を離れて短
大,専門学校,大学に進学するか就職して独立する可能性のある18歳(~ 20歳)までには終了するのが理想的と考えられる4).具体的には,小児循環
器科医が中心となって診療を継続しながら成人先天性心疾患外来もしくは循環器内科外来に紹介し,患者と循環器内科医(あるいは成人先天性心疾患
を専門とする医師)とコミュニケーションを図りながら,次第に循環器内科(あるいは成人先天性心疾患を専門とする医師)への受診頻度を高めることによ
り,患者にとって混乱が生じないように「移行」を進めるのが望ましい6),656),658)−660).実際には幼少時より馴染みのある循環器小児科へ継続して通院す
ることを希望する患者や両親も多いが,医師の専門性や患者自身の将来のことを十分に説明して「移行」を進める.この作業が不十分であると,成人期に
達して通院が途絶える可能性があり,定期検診の重要性や生活管理および将来への注意事項を知らないまま社会に出るという,患者にとって不利益な
状態を生み出すことになる.このため,医療従事者は「移行診療」の重要性を認識する必要がある.
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成人先天性心疾患診療ガイドライン(2011年改訂版)
Guidelines for Management of Congenital Heart Diseases in Adults(JCS 2011)