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2 臨床所見
①症状

 小欠損は,心雑音以外に,何ら自覚症状なく運動や日常生活に支障がない.

②身体所見

1)視診・触診
 頚静脈波では,A,V波ともに正常であることが多いが,心不全を認める場合は,突出する.反兆脈(バウンデイングパルス)を認める場合は,大動脈逸
脱による大動脈閉鎖不全の合併を考慮する.小欠損孔では,第3,4肋間胸骨左縁にスリルを触知する.漏斗部欠損では,第2 肋間胸骨左縁にスリルを
触知し,時に左方,さらに頸部に放散する.中欠損では,左室,肺動脈拍動を触知する.

2)聴診
 中等度以上の膜様部欠損では,胸骨左縁下部の高調性の汎収縮期雑音(Levine3~ 4度のことが多い),漏斗部欠損型では,胸骨左縁第2 ~ 3肋間
の汎収縮期雑音を聴取することが多い.中等度までの筋性部欠損は,膜性部と同じ位置に,汎収縮期雑音を聴取する.肺血流量が増えると,心尖部に
Ⅲ音と低調な拡張期流入性雑音を聴取する(相対的僧帽弁狭窄).肺高血圧合併では,Ⅰ音,Ⅱ音が亢進し,肺動脈性駆出音を聴取する.肺血管抵抗
が高くなるとともに, 収縮期後半が短縮し,Eisenmenger症候群では,収縮期雑音を認めず,無雑音あるいは肺動脈閉鎖不全の雑音(Graham Steel雑
音)のみを聴取する場合もある.漏斗部欠損型で大動脈弁閉鎖不全を合併する場合,連続性雑音ではなく,汎収縮期と拡張早期雑音を聴取する.拡張期
雑音は,高調で大動脈Ⅱ音に連続する.最強部は動脈管開存と異なり,Ⅱ音の前後ではない(動脈管開存は,連続性で,Ⅱ音周辺にピークがある).心
室中隔欠損による収縮期雑音は,胸骨左縁第3第4肋間が最強であり,拡張期雑音(大動脈弁閉鎖不全)は胸骨左縁中部から下部が最強点である.ま
た,瘤内に小欠損が残存することがあり,この場合,収縮後期にこれら欠損孔が開き,血流が通過する.このため,収縮後期雑音あるいは収縮後期に雑
音が増強する(late systolic accentuation)ことがある.
成人先天性心疾患診療ガイドライン(2011年改訂版)
Guidelines for Management of Congenital Heart Diseases in Adults(JCS 2011)