心房中隔欠損は,欠損部位により二次中隔型,一次中隔型,静脈洞型,単心房型,冠静脈洞型に分類される.1cm以上の欠損の多くは臨床的に診断されることが多い.全先天性心疾患患者の1割前後を占めるとされ,二次中隔型が最も多く,約2:1 で女性の割合が高い.短絡血流量と方向は,主に欠損口の大きさ,左右房圧較差,左右の心室のコンプライアンス,肺血管抵抗によるところが大きい.病態初期にはコンプライアンスが高い右室方向に血流が流れるので安静時は左右短絡が主となる.成人の病態生理の特徴としては,長期にわたる肺血流増加により肺血管床の内皮機能障害から肺高血圧症を呈することがあることや成人性心疾患(左心不全,弁膜症,冠動脈疾患,肺疾患,高血圧,膠原病等)の合併により病態に修飾がかかる点が挙げられる.また,心房細動/粗動といった不整脈の発生は40歳以前では少なく,年齢とともに増加し病態の悪化に寄与する.
1 解剖学的特徴と病態生理
成人先天性心疾患診療ガイドライン(2011年改訂版)
Guidelines for Management of Congenital Heart Diseases in Adults(JCS 2011)