1 解剖学的特徴,病態生理と小児期修復術
 房室弁に隣接する心房心室中隔組織の欠損に房室弁異常を合併する疾患で,完全型と不完全型に分かれる.完全型は共通前尖と共通後尖が分離
し,共通房室弁を形成する.不完全型では,房室弁は左右に分かれる.左側房室弁は裂隙(cleft)を有し,房室弁逆流を生じる.完全型は心室中隔欠損
を伴い,不完全型は伴わない.完全型は腱索の付着部位により,さらに,3つの型に分類される(Rastelli分類A-C)683).左房室弁逆流の程度は弁形成
異常と弁輪拡張の程度に依存する.また,心室低形成,左室流出路狭窄等の合併の有無により病態が修飾される.

 内科的治療では十分な改善は望めず,高度の肺血管閉塞性病変がない限り,中隔欠損のパッチ閉鎖術と房室弁修復術の適応となる.多くは裂隙縫
縮術を含む房室弁形成術を行う.左室低形成例では,Fontan型手術になることもある.不完全型の手術成績は良好である.高度房室ブロックに対しては
ペースメーカの植込みが行われる.一方左側房室弁の変形が著しく,形成術のみでは逆流がコントロール困難な場合,または明らかに狭窄を来たすと思
われる場合には僧帽弁置換を考慮する.また房室結節の位置異常があるので,パッチ縫着時等に損傷しない注意が必要である.遺残短絡,有意の房
室弁逆流の残存がある症例は少数であるが,術後も房室弁逆流が顕著ないしはその程度が進行性に増加するような場合には,僧帽弁置換を含めた再
手術を考慮する.
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成人先天性心疾患診療ガイドライン(2011年改訂版)
Guidelines for Management of Congenital Heart Diseases in Adults(JCS 2011)