成人期にみられる最も頻度の高い先天性心疾患で,全人口の約1%を占め,70%以上が男性である170),710),711).95%に弁尖の不同がみられ,75%にrapheといわれる仮性交連組織が存在する712).大動脈中膜にcystic medial necrosisの所見が認められ,血管壁のfibrillin-1含有量が少ないことが知られており,大動脈拡張,瘤化,解離のリスクが高いとされている.この所見は,大動脈弁閉鎖不全を増悪させると同時に体心室収縮機能,拡張機能,冠動脈潅流を悪化させる.これらの疾患群は,大動脈拡張という形態的な特徴だけではなく心機能異常を伴う新たな疾患群,Aortopathyとしてとらえられるようになった.この拡張性病変は,単に狭窄後拡張(post-stenotic dilatation)という血行動態異常に基づく疾患群ではなく,内在する大動脈壁異常に基づくものである169).比較的若年齢から大動脈弁狭窄が進行する169),713)−717).少数だが大動脈弁閉鎖不全を主徴とする場合がある718).家族歴を認めることも多く,その検索をしておくことは感染性心内膜炎の予防を行える点でも重要である710)
1 解剖学的特徴と病態生理
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成人先天性心疾患診療ガイドライン(2011年改訂版)
Guidelines for Management of Congenital Heart Diseases in Adults(JCS 2011)