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①不整脈や突然死に対する管理のポイント

(1) ペースメーカや除細動器植込み患者に対して,心機能の評価,運動負荷試験を行う.
(2) 定期的に,ホルター心電図を行うことが望ましいが,頻度は,各々の血行動態や臨床症状によって決定する.
(3) 不整脈診断において,電気生理学的検査は有用である.

②突然死

 良好な血行動態であるにもかかわらず,長期遠隔期に,突然死が起こることがある63).原因として,心室頻拍が最も多く,上室性頻拍(心房粗動)や房
室ブロックも一因となる.発生頻度は,10年で2.5%,25年以上の経過で3 ~ 6%にみられる63),904),905).日本の多施設研究で,1972年の手術生存例
122人の術後19.0年の経過観察で,突然死は2 人であった173)

 術直後3日間以上持続する完全房室ブロックを突然死の危険因子とする報告がある906).多くの研究では,心室頻拍を突然死の主因と考えている.多
施設研究で,登録時の幅広いQRS間隔と手術時年齢が心臓突然死の危険因子とされ907),908)さらに経時的なQRS幅の増加も突然死に関係してい
る.QRS時間延長とJT dispersionの増加を突然死の予測因子とする報告もある909).QRS時間は右室の大きさや機能を反映し359),910),QRS時間の臨
床的意義は大きい.我が国の術後不整脈に関する多施設共同研究では,512人を対象として,平均11.7年の経過観察で,不整脈死は1人,VTは,8人と
欧米に比べて良好な成績であり,心室頻拍の危険因子として,120ms以上のQRS幅,術後経過期間が有意であった911).術式では,心内修復時の経
心室アプローチに比して,経心房アプローチが,致死性不整脈や右室機能不全を減少させるとの報告もある40),912),913).心内修復術後の突然死の危険
因子をまとめると,(1)心内修復時の高年齢,(2)高度の右室流出路狭窄,(3)中等度から重症の肺動脈弁閉鎖不全や狭窄による右室機能低下,(4)
ホルター心電図やEPSで誘発される心室性頻拍の既往,(5)左室機能低下,(6)QRS幅≧180msが挙げられる46),906),908),914)−917).日本循環器学会
の「心臓突然死の予知と予防法のガイドライン918)も参照.

③電気生理学検査(EPS; electrophysiologic study)

 動悸,めまい,失神等の徴候は,重篤な不整脈を伴っている可能性があり,電気生理学検査を含めた心臓カテーテル検査や,血行動態の早急な評価
が必要である917).電気生理学検査の目的は心室頻拍の診断,機序の同定,マッピング,治療効果の判定等である.プログラム刺激による心室頻拍の
誘発は,心臓死のよい指標となる.血行動態の安定した,マッピング可能な単形性持続性の心室頻拍は,カテーテルアブレーションを考慮する.心房粗
動に対しては,診断,発生機序の解明,リエントリー回路に対するアブレーション,高頻度心房ペーシングを目的とした検査が,心房細動に対してはカ
テーテルアブレーションが行われる.あるいは,肺動脈弁置換や心室中隔欠損閉鎖等と同時に,術中のマッピング・アブレーションが行われる919)

④ ICD(植込み型除細動器)

 抗不整脈薬治療はEPSで誘発阻止作用を示す抗不整脈薬を選択するか920),921),心室期外収縮や非持続性心室頻拍の抑制を目的とした薬剤を選択
する922).外科的あるいはカテーテルアブレーションにより一時的な成功が得られても,致死的な不整脈のある患者では,その効果は不確実で,除細動
器に及ばない918).失神,症状を伴った心室頻拍,救命された突然死ニアミスでは二次予防としてICD植込みの報告が増えている923)−929).一次的また
は二次的な予防のためのICDが植え込まれたFallot四徴では,適切で,効果的な除細動が高い確率で行われる一方,不適切な除細動や植込みリードに
よる合併症,不適切作動がよくみられる407),916).また,不整脈治療を併用した再手術後の心室頻拍の発生率は著明に低下するため,この疾患に関する
ICDの適応は,未だ明らかではない411)
 
6 不整脈の診断・治療
成人先天性心疾患診療ガイドライン(2011年改訂版)
Guidelines for Management of Congenital Heart Diseases in Adults(JCS 2011)