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 成人先天性心疾患患者の,就業率は報告により異なるが529),531),540),疾病が重症なため就業できない患者は,全体の10%以下とされている
539).NYHA機能分類Ⅲ以上では,入退院を繰り返すため満足に勤務できない場合も多い3).NYHA機能分類Ⅱ以上,心拡大,強心薬内服が就業に影響を
及ぼし,身体活動能力は就業状況と相関するとの報告がある531),562).重症心疾患で,教育程度が十分でない場合は,就業率は低い516),562).小児期から
思春期の精神的葛藤が成人期以降の精神状態,ひいては就業に影響することがある21),557).障害者雇用促進等に関する法律を利用すると就職が有利な
場合がある3).内部障害のため,職場の理解が乏しいことが少なくない.職業訓練を受け,就業しやすい技術を身につけるが必要であるが,資格獲得率は
低い.普通運転免許は就職時のみならず通院時にも有用であるが,取得率は一般と比べ低い3).心臓病は就職時に不利ではないことが多いが,多くの患者
は心疾患があると就職に不利と考えている3).自己を低く評価し520),561),562),心臓病のため就職を拒否されるのではないかと考えるため,就職先を探すこ
とをためらう場合や雇用者側に心臓病の告知をしない場合もある561).雇用側は,心臓病患者は病状の急変や長期入院を必要とする可能性があると考え雇
用に消極的になりやすい563).心疾患の自然歴,修復術後遠隔成績,罹病率は今後明らかになるので165),主治医は患者の勤務能力に関する身体的情報
を,生涯歴も含め雇用者側に的確に伝えることが望ましい553).就業に大きな影響を及ぼす要因に,精神的問題がある.精神的問題には,知的障害と精神
障害が含まれる.知的障害の原因として,染色体異常,周術期の集中管理等によるものがある.一方,精神障害の原因は,22q11 deletion症候群等が挙げ
られる.ともに就業能力は低く社会的バックアップが必要となる564)−566)
 
5 就業
成人先天性心疾患診療ガイドライン(2011年改訂版)
Guidelines for Management of Congenital Heart Diseases in Adults(JCS 2011)