成人先天性心疾患は,背景となる心臓病に関した問題だけでなく,教育,就職,結婚,妊娠,出産,育児,子供への遺伝,旅行,運動,レクリエーション,
社会保障(保険,年金,身体障害者認定,医療給付,更成医療給付)等社会的な問題も重要である3),34),528).成人先天性心疾患患者は,一般と比べ,
社会的自立の程度は劣ることが多いとされる21),529)−532).社会的自立を規定する因子は,医療側,患者側,社会側の3つの側面に分けられる528)(表
48).医療側には十分な知識に基づく適切な医療,医療施設の提供,長期予後,生涯歴の解明という因子がある.患者側には疾患重症度,精神心理学的
問題533)−536),術後遺残症,続発症,合併症,継続的医療の必要性,入院,投薬の継続,再手術,病気の適切な理解という因子がある.また,社会的側
面には社会の心臓病に関する適切な理解,教育,就職の機会均等性,社会保障福祉体系(健康保険,障害者認定,年金,医療費公費負担)という問題が
ある.社会的自立には,これら因子が複合し影響を及ぼす.