1. 成人先天性心疾患診療を実施し,循環器内科医や小児循環器医の教育施設となり得る代表施設を全国で15~30施設認定し,
成人先天性心疾患診療を専門とする医師や看護師を養成する
2. 患者統計から各地域に必要な成人先天性心疾患を診療する中核施設は人口約200万~800万人に1施設の割合で必要とされて
いるので655),全国で約50か所に成人先天性心疾患拠点施設を開設し,患者の便宜を図る
3. 中核病院に通院が困難な地方の患者には,自宅近隣のかかりつけ医と中核病院との間でインターネット等を介した遠隔診断を
行い,通常の経過観察だけでなく緊急時の初期対応に役立てる
4. 成人先天性心疾患は出生直後からの非常に長い病歴を持つことが多いので,過去の臨床情報や手術所見が失われない様,臨床
情報のデジタル集約化,保存化を図る

 欧米では1980年代より各地域の主要病院に成人先天性心疾患診療部門が開設され,循環器内科医が中心となって診療が行われている.医療事情の異
なる日本では,欧米のシステムを取り入れつつも,各地域に適した診療体制を構築する必要がある.現時点では全国的にみて成人先天性心疾患に特化し
た診療部はごく少数で,年間入院が50人を超える施設は全国の循環器専門医研修施設の2%にとどまっている651).また循環器内科医の診療への参加が
少ないために,患者のほとんどは小児循環器科医が診療にあたっている.成人先天性心疾患を担当できる心臓血管外科医も少ない.これらの理由から,日
本における成人先天性心疾患の診療体制の確立に向けて,以下のような目標が示されている(表62)
2 成人先天性心疾患診療施設
表62 成人先天性心疾患の診療体制の確立に向けての目標
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成人先天性心疾患診療ガイドライン(2011年改訂版)
Guidelines for Management of Congenital Heart Diseases in Adults(JCS 2011)