12 完全大血管転位 動脈位血流転換術後
チアノーゼ型先天性心疾患
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 完全大血管転位に対する根治手術は,大血管レベルで血流転換を行う動脈位血流転換術(ASO; arterial switch operation,Jatene手術)が現在の標準術式となっている.動脈位血流転換術の術後早期死亡率は1.8~ 15%で,長期生存率は10~15年で86~94%と比較的良好であるが,遠隔死亡の多くは術後早期1 年以内にみられる.死亡原因は冠動脈狭窄に伴う心筋梗塞および突然死,左心機能不全,術後肺高血圧である.遠隔期の続発症は,右室流出路狭窄,大動脈弁閉鎖不全,冠動脈狭窄が報告されている4),942),962)−979)

 動脈位血流転換術後の定期的な経過観察は,肺動脈狭窄,冠動脈狭窄,そして,大動脈弁閉鎖不全に注意を向ける.(1)心電図は,心筋虚血と右室肥大(肺動脈狭窄),(2)心エコー法は,肺動脈弁上分枝狭窄(MRI やCTが必要な場合も多い),大動脈弁逆流,左室機能不全に注意する.(3)運動負荷テストは,心筋虚血の検出に用いる.(4)MRI は,肺動脈狭窄,右室機能,心筋線維化の評価に用いる.(5)CTと冠動脈造影は,心筋虚血が疑わしい場合の冠動脈狭窄の検索の際に行う.定期的な冠動脈造影は推奨されてはいない.
1 大動脈弁閉鎖不全の管理 2 右室流出路狭窄の管理 3 心筋虚血の管理
成人先天性心疾患診療ガイドライン(2011年改訂版)
Guidelines for Management of Congenital Heart Diseases in Adults(JCS 2011)